○ 2026.09.18
第1回:逆輸入のスパイス ── 『Let’s Play』という「国境越えの一皿」が煮上がるまで
料理人としてのスロウカーブ ――カレーの調理場より
スロウカーブという会社は、アニメーションの企画・プロデュース・宣伝を担う、例えるなら「こだわりのカレー屋」だ。プロデューサーは料理人、作品はカレー。どんなレシピ(企画)を書き、どんな素材(スタッフ)を選び、どのように煮込んで提供するのか。
シリーズ第2回となる今回は、アメリカ発のウェブコミックを日本のアニメーションへと昇華させた『Let’s Play クエストだらけのマイライフ』(以下、Let’s Play)の「調理場」を紐解くため、クランチロールのヘザー・ホーン氏、フジテレビの菅原花氏、そしてスロウカーブのプロデューサーである坂本美南香氏に話をうかがった。アメリカ発のウェブトゥーンが、日本の「スパイス」でどのように煮込まれていったのか。再びカレー片手に、その軌跡を辿る。
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■スロウカーブとの出会い
――今回はカレーを食べながらスロウカーブについて語る企画の第2回となります。よろしくお願いいたします。
ヘザー:私がクランチロールに入って初めて日本を訪れたとき、スロウカーブの皆さんが連れて行ってくれたのがカレーランチだったんですよ。だからすごく懐かしいですね。

――さっそくカレーに紐づいた思い出が出てきましたね(笑)。本作はウェブトゥーン原作ですが、そもそもどういう経緯で企画が動き出したのですか。
ヘザー:発案は私です。私は入社当時、ちょうど社内で『Let’s Play』の話が出始めていて、個人的にも大好きな作品でした。最初の面接でも「アニメ化に向いている」とお話ししたのを覚えています。
坂本:私が2022年に入社した時には、もう企画の話はありました。当時はまだ日本で発売されていない原作だったので、「日本のアニメファンにどうリーチするか」が最大の課題でした。
ヘザー:アメリカのクリエイターとも議論を重ねましたが、本当にアニメとして成立させるためには日本のクリエイターの力が必要だという結論に至り、スロウカーブさんに相談したんです。

■現代の「オタク」が共感するリアルな葛藤
――先ほど「個人的に好きな作品だった」とおっしゃいましたが、ヘザーさんは原作のどこに魅力を感じたのですか。
ヘザー:主人公のサムには強く共感しました。キャリアを築こうと努力しながら何を望んでいるのか模索する葛藤や、恋愛の悩み。そのすべてがリアルなんです。

菅原:仕事での成功と恋愛、その両方の悩みを抱えているのが、いいなと思えるポイントですね。

――ゲーム開発やストリーマーといった現代的なオタク要素もこの作品の特徴だと思いますが、いかがですか。
ヘザー:ええ。クランチロールのユーザーには親和性が高いので、きっと共感してもらえると感じました。
坂本:原作者のリーアンさんも本当に日本のアニメが大好きで。『セーラームーン』や『BLEACH』、『ポケモン(ポケットモンスター)』などが好きなんですよ。
ヘザー:実はリーアンは有名になる前から『NARUTO』のファンアーティストとして知られていました。アニメを観ながら独学で絵を学んできた方なんです。
■日本のアニメファンに届けるために
――先ほど「日本のアニメファンにどうリーチするか」が課題だったとのお話がありましたが、何か工夫されたことなどありますか。
坂本:通常ならすぐにアニメスタジオを探すのですが、今回は日本未発売の原作ということもあり、アピールポイントを増やすためにえびもさんにキャラクター原案をお願いしました。1年以上かけて開発した絵を持ってスタジオ営業に回ったんです。

ヘザー:アメリカのコミックスタイルを、いかに日本のアニメとして成立させるかは大きな課題でした。
坂本:原作者のリーアンさんと「目を9%小さくしてください」といったミリ単位の修正を一歩ずつ積み重ねました。スタイリッシュさを求めつつ、男性読者も楽しめるデザインを意識し、髪型などもえびもさんのセンスを活かしました。えびもさんが描く絵にはリッチさやゴージャスな雰囲気があるので、『Let’s Play』の大人向けのドラマにフィットすると思ったんです。ただ、劇中ゲーム内も含め、かなりのキャラクターがいるので、数はその都度追加追加になって、結局相当数描いてもらうことになりました……。えびもさんには本当に感謝しています。

取材・文/武井風太
<第2回に続く>