○ 2026.08.17
第4回:盛り付けは「変態」 ── 狂った世界を「健やか」に届ける宣伝の極意
■飽和したデスゲーム市場を拓く一手
――プリプロが終わって、瀬下さんをはじめとしたスタッフの本格的な制作に入ると思うのですが、今回はスロウカーブにまつわる取材ですので、そこは他のインタビューに譲れればと思います。

瀬下:あらためて、珍しい取材ですよね(笑)
――一方で、作品制作中に尾畑さんは「盛り付け」、つまり宣伝を考える必要がありますね。

尾畑:ええ。デスゲームもののフォーマットではあるじゃないですか。ただそれだと飽和状態になっているので、フェティシズム、つまり変態をあえてフロントに出して「変態同士のバトルロワイヤルものです」というメッセージを入れました。ヨコオさん、瀬下さん、大久保さん、じんさん……尖った人たちの「混ぜたら危険」みたいな危なっかしさをフロントに出そうと。

――お話やキャラクターではなく変態をウリにしたんですね。
尾畑:でも、もっと変態にすればよかったかもと今では思いますね(笑)。
瀬下:美津子はセクシー女優ですが、この設定をもっと掘り下げると良かったかもしれませんね。
尾畑:ヨコオさんが「セクシー女優を普通の職業として見る女性」を登場させたいとすごい気にしていたのが印象的でした。

瀬下:すごいこだわりでしたよね(笑)
――宣伝で重要になるのが、キービジュアルですよね。どういうイメージだったのですか。

尾畑:日常の学校生活の中にある違和感、気持ち悪さ、不穏さをコンセプトにしていました。ロゴも実は、文字化けみたいな暗号が仕込んであるんです。
――暗号なんですか。
瀬下:あれを解読すると「エッチなことしたい」とかくだらないことが書いてあるんですよ(笑)。
――このキービジュアルにも書かれている「健やかに狂う」がキャッチコピーなんですね。
尾畑:これはクリエイター、宣伝プロデューサー両方とお話しして作ったものです。本編でも使われている言葉ですね。「そもそもこの世界って狂っているよね」というのを誰も気に留めない、それが「健全だ」と。
瀬下:バック・トゥ・ザ・フューチャーのようにタイムマシンで高校生の自分に会いに行って、「今アメリカの大統領って誰だと思う?」という問答をしたら「えっ、あの人が!?」と超驚きます。元々世界は健やかに狂っているんだと思います。

■料理人としてのスロウカーブ

――これにて“健やかに狂った一皿”のできあがりとなるわけですが、最後に瀬下さんから見て、尾畑さんはどういう料理人でしたか。
瀬下:和食の超一流割烹なんだけど、ある日「カレー作ったんで食います?」ってメニューにないものを出してくる感じですかね。理詰めじゃなくて、本能的なところで一皿作ってくる。そしてそれが本職の和食より美味かったりして(笑)。料理人(プロデューサー)としては、傑出した才能なんじゃないでしょうか。

2026年1月某日 スパイスバル パハルガンジにて