○ 2026.09.25
第2回:厳選素材の目利き ── 冨安大貴監督という「匠」と、重なり合う信頼の味
料理人としてのスロウカーブ ――カレーの調理場より
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■「+Ultra」枠とのパートナーシップ
――スタジオ選びと同時に、委員会の組成も必要ですよね。
菅原:スタジオさんが決まったあたりでフジテレビもご一緒することになって、うちが幹事社となって、お声がけをしていきました。放送の1年前には全社決まっていたと思います。「+Ultra」枠は、海外発信をコンセプトにアニメが海外でこれだけ注目される前から取り組んでいたので、まさにこの作品はぴったりでした。

――話が前後しますが、そもそもフジテレビとクランチさんはスロウカーブとのお付き合いはいつ頃からなんですか。
菅原:私自身は『アンデッドガール・マーダーファルス』という作品からご一緒しています。
――スロウカーブさんの印象はどのようなものですか。
菅原:企画や宣伝についてアニメの分野に特化されているので、いい意味で発想も自由な印象があります。
ヘザー:海外独自の無茶な依頼が降ってきたとしても我慢強く取り組んでくれる会社です(笑)。

■OLM・冨安監督が挑む「人間ドラマ」
――制作スタジオがOLMさん、監督が冨安大貴さんというチーム構成ですが、どのような理由で決まったのですか。
坂本:弊社としてすでに『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』でご一緒していた繋がりはあったのですが、何よりOLMの冨安監督が「普段はポケモンを長年やっているけれど、ドラマものをやってみたい」と熱望してくれたのが決め手でした。大人が見られるような色調の参考フィルムを送ってくれたりして、情熱を感じたんです。そこで言われたのが、やっぱりえびもさんのキャラクター原案で。「この絵ならできると思う」と言ってもらえたので、1年準備してきたのは無駄じゃなかったなと、苦労が報われました(笑)。
ヘザー:『ポケットモンスター』の制作チームが関わると聞いて驚きましたが、同時に美しい巡り合わせだとも感じました。

■海を越えたコミュニケーション
――制作スタジオが決まって、脚本打ちなど実際の制作が始まると思いますが、原作のリーアンさんとのやりとりはどのように行われていたのですか。
坂本:基本ヘザーさんが窓口でした。リーアンさんは脚本や絵コンテのチェック、さらにはアフレコも半分くらいはZoomを使ってリモートで参加していただいていました。初回アフレコの時は感動で泣いていらっしゃって。
――そんなに感激されていたんですね(笑)。
ヘザー:そもそもこの作品のアニメ化が決まり、日本で制作されること、そしてスタッフや制作陣がすべて日本のチームになることをお伝えしたときから涙を流していました。

ヘザー:そして制作を通して感じたのは、彼女がクランチロールやスロウカーブ、フジテレビ、そして冨安監督や脚本の松井さんといった関係者に対して、大きな信頼と柔軟さを持って接してくださっていたことです。アニメ版として物語を描いていくことを、制作チームにしっかりと委ねてくださっていたのが、とても印象的でした。「信頼しています」と、そう言ってくれました。
――では原作側とはトラブルもなく……。
ヘザー:トラブルはなかったのですが、実は初期段階では、感情の具現化キャラである「エモテくん」をカットする案もあったんです。でもリーアンさんが「もし出なくても大丈夫……」と言いつつ、全然大丈夫じゃなさそうで(笑)。
坂本:急遽デザインを追加して復活させることにし、結果として監督も「緩急をつけるためには必要だった」と仰っていました。やはり原作者のこだわりポイントですし、この作品ならではの重要なスパイスですから。


取材・文/武井風太