Slow Curve

○ 2026.10.21

第1回:仕込みは現代のリズムで──「正気ですか?」から始まった、令和の『奇面組』レシピ

料理人としてのスロウカーブ――カレーの調理場より


『ハイスクール!奇面組』は、存在そのものがカレーのような作品だった

スロウカーブという会社は、アニメーションの企画・プロデュース・宣伝を担う、たとえるなら「こだわりのカレー屋」だ。プロデューサーは料理人、作品はカレー。どんなレシピ(企画)を書き、どんな素材(スタッフ)を選び、どのように煮込んで提供するのか。

シリーズ第3回となる今回は、80年代に週刊少年ジャンプに連載され一世を風靡し、このたび再アニメ化が果たされた『ハイスクール!奇面組』を紐解いていく。

監督の関 和亮氏、フジテレビの森 彬俊氏、そしてスロウカーブのプロデューサーである米森裕人氏に話をうかがった。

『ハイスクール!奇面組』作品ページはこちらから



■コロナ禍から生まれた企画として


――カレーを食べながらスロウカーブについて語る企画の第3回です。今回は『ハイスクール!奇面組』がどのように成立したのかについておうかがいしますが……まずは、ビールから行きますか。

森:いいですね。シルクエールにしましょう!


――フードも頼みましょう。「牛すじカレー」「キーマカレー」にしましょうか。

関:太っ腹ですね! すごいな。


(シルクエールが人数分やってきて)

一同:お疲れ様です、乾杯!


関:うまっ! 今日は蒸し暑いから最高ですね。


――じゃあカレーが来たら一度止めて食べるとして、それまでゆるゆるとやっていきましょう。85年に一度テレビアニメが放送されていますが、今回なぜ新作アニメーションを制作する流れになったのでしょうか。

米森:企画を考えていた当時、ちょうどコロナ禍に突入したんです。みんな家にいて学校にも行けなくなる状況が続いてしまって。自分は学校が好きだったんですよ。先生とも仲が良くて、毎日友達と会ってサッカーするような生活だったので、「学校ってすごく楽しいもの」っていうイメージがあって。「それに行けないってつらいんじゃないかな」と思って。なら、学園もので学校の楽しさを感じてもらえないかと。くわえて、コロナ禍ということもあり、みんながYouTubeを凄く見始めた時期だったんじゃないかなと。そのなかで必ずしもイケメンじゃないけど、個性的な人たちが凄く人気者になっていて。それなら『奇面組』はいけるんじゃないかと。


――コロナ禍だったことがきっかけのひとつになったんですね。原作の魅力はどこにあると思われていましたか。

米森:「企画書を作ろう」となってあらためて読んだのですが、コミックス表紙の色使いやデザインがめちゃくちゃポップなんですよ。シティポップ的な感じなんですよね。今はそういう音楽も流行っていますし、現代に甦らせればフィットするんじゃないかと。あと「リズムネタ」もたくさん入っていて。リズムネタって世代も国内外も問わないので。他にも沢山ありますが、この2点は現代にアニメ化しても伝わる魅力なんじゃないかと思いました。


――ギャグが古びる懸念はなかったのですか。

米森:むしろフィジカルなネタって、ちゃんとやれば古びないんじゃないかと思いました。時代性のあるパロディネタはどうしても世代差は出ますが、フィジカルネタ自体は結構ちゃんと通じていたと思いますし。以前、島田紳助さんの話で「(漫才師の)ツービートがいて、紳助・竜介が出てきて速さが1.2倍になって、でもダウンタウンを見たときに『自分たちよりもさらに1.2倍速い、もう俺たちの時代じゃない』と感じた」という話を聞いて「なるほど」と。だからギャグについても、現代のリズムに落とし込めば意外といけるのではと思っていたんです。企画書にも書いたのですが、「ハイテンポ」というのは一番重視した部分でした。



■ターゲットは若者世代


――ではここでその企画書を見てみましょう。

TVアニメ『ハイスクール!奇面組』企画書表紙

森:懐かしいですね。こんなに分厚かったんだ。
米森:原作者の新沢(基栄)先生や集英社の方に納得してもらうために、かなり詳しめに書いたんです。


――この企画書を見て集英社さん側からは、どんな反応があったのですか。

米森:「正気ですか?」みたいな(笑)。ただ先方は過去の作品を掘り起こしたかったというお気持ちや、ライツ事業としてやるべきひとつのミッションという感覚もお持ちで。「やっていただけるならウェルカムです」みたいな感じでした。


――パッと見目につくところからお話しできればと思うのですが、企画書が先ほどお話ししたコミックスの表紙っぽくなっているんですね。

米森:それは意識してデザインしました。
関:僕もアニメ世代なので、こういうポップさは知らなかったのですが、あらためてこの話聞いたときにパッと見て、めちゃくちゃ洒落てるなと。パステルとも言えない独特な80年代感。それがある種普遍的なものとして、ひとつのカラーコレクションになっているなって。


森:女性ファンが当時から多かったのは、こういうところが響いたからじゃないですかね。当時の週刊少年ジャンプは『北斗の拳』や『キン肉マン』といった劇画調のものが多かったじゃないですか。そのなかで異彩を放っていたのではないかなと。


――企画書を読むとターゲットとして、若い方が重視されているようですね。

米森:かつて『奇面組』を見ていた方々は、やっぱり世代的に忙しくて、そのクールのアニメをチェックするような暇が無いだろうと思ったんですよ。やってる事すら気づかない。なら、まず若い人をターゲットにしないとと思ったんです。彼らが発信することで、上の世代が気付いて、影響を与えていくイメージでいました。


取材・文/武井風太

〈第2回に続く〉